1 「木岡哲学塾」について
◎木岡哲学塾Ⅰ:「対話の会」
(1)報告事項
6.21時点で、予定した全10回のうち8回を終了しています。8回目までに提供された「事例」のテーマ(6.19については、予定)は、次のとおりです。
第1回(3.13):「〈対話〉としての哲学」(オリエンテーション)
第2回(3.27):「忘れられない出会い」
第3回(4.10):「描かれないものたちへの思い」
第4回(4.24):「「災害対応への想い」を「備えていた」につなげたい」
第5回(5.8):「当事者会「いきるをつくる」の紹介」
第6回(5.22):「哲学と対話」
第7回(6.5):「「事実」と「真実」」
第8回:(6.19):ドーナツと邂逅
春期最終回(7.17)は、「それぞれの気づき」と題して、事例検討のまとめを行う予定です。事例提供者を中心に、参加者全員がそれぞれの「気づき」について語った後、意見交換を行って、締めくくりたいと考えています。「対話」を中心とする本会の基本方針については、以下、「何が哲学なのか」(5.21付「新着情報」に初出)をご参照ください。
何が哲学なのか――〈対話〉をめぐって
木岡 伸夫
哲学に興味を抱いて、「哲学とは何か」を訊ねる人に向って、私は次のように答えています。①自分のテーマを、②自分の頭で考え、③自分の言葉で表現する、それが哲学だということです。この答えは、半世紀を超える自身の学問経歴をつうじて、「自分で」考え出した回答です。同じ答えは――哲学についての教科書がどれだけあるか知りませんが――、たぶん見あたらないでしょう。①~③の中でも、とりわけ②に引っ掛かる人が、世の大半ではないか、と思われるからです。なぜかと言えば、「死とは何か」「どう生きたらよいか」といった「哲学的」な問題は、「自分の頭で」考えるには難しすぎるので、誰かエライ先生――「哲学者」と呼ばれる――に教えてもらった方がよい、ということになるからです。無理もありません。「自分の頭」によほどの自信がない場合、他人から答えを教えてもらうということが、要領のよい生き方ですから――宿題を他人に手伝ってもらって、片づけた覚えのある人も多いはずです(かく申す私も、その一人)。日本でよく売れる書物は、すべてハウツーもの。『マルクスが30分でわかる本』( ?)といった類が、それです。自分で考えることをしない人向けに、俺のこの本を読んだら世界が解るよ、といった顔つきをした書物が市場に出回り、何十万部もの売れ行きを記録する、という日本の現実……
私が主宰する「対話の会」は、上に挙げた①③を最も重視します。そのうえで、②について、自分一人で考えるのはなく、他者とのやりとりをつうじて考えながら、自分なりの答えを引き出す(「気づき」に至る)ということが、「対話」という手続きをとることの狙いです。誰にも相談することなく、自分一人で考え抜いた結果を公表する――「研究発表」と呼ばれるこの種の行為は、それができる意欲と能力を具えた「専門家」のとる道であり、一般人にとって不可能ではないものの、困難な選択です。哲学がふつうの人に開かれるためには、「対話」という〈共同討議〉こそが、ふさわしい。このことに思い当たったのは、比較的最近のことです。私は、そのこと以外に、真の哲学は〈対話〉である、という確証を抱き、目下、それをテーマとする論文に取りかかっています。その理由を一言でいえば、〈邂逅の論理〉は〈対話の哲学〉を不可欠とする、ということです。
これまでの「対話の会」における「事例提供」は、自身の抱える問題について報告し、質疑応答をつうじて、各自「気づき」を得るという仕方で、①②③を実践してきました。これまで扱われてきた問題は、すべて⒜自分自身が問題の「当事者」となるケース、でした。しかし、それとは異なり、第三者的な立場から、⒝知的関心の標的となる哲学的テーマを取り上げる場合、があってもよいと思います。参加者各位が、①「自分のテーマ」を選ぶという大原則に立つかぎり、事例の内容は⒜⒝いずれであってもよい、と私は考えます。春期の後半は、そういう事例提供が増える見込みです。
以上の方針をご理解くださる方に、ひきつづき前向きのご参加をお願いします。
(2)秋期に向けて
秋期の「対話の会」は、次の日程で行います。春期と同じく、隔週日曜午後(14時―16時)、全10回を予定しています(日程変更の場合は、本ページでお知らせします)。
PCAGIP法(3.21「新着情報」参照)をもとにした「事例検討」(報告30分、討議60分)のほか、各回冒頭(30分程度)に、参加者の持ち寄った話題について意見交換を行います。
○開催日(秋期):9.11、9.25、10.9、10.23、11.6、11.20、12.4、12.18、[2023]1.8、1.22
○会場:木岡オフィス(阪急京都線相川駅下車スグ)
○参加費:500円(資料代、お茶代)
秋期からの参加を希望される方は、主宰者(木岡)までお申し込みください
◎木岡哲学塾Ⅱ:「読書会」
日本語で書かれた最高水準の哲学書を、各回2節ずつ読み進めています。2時間の前半(1時間)を、テーマを決めてのレクチュアや研究発表・討論に充てるというように、「対話の会」とは性格が異なり、学問的な内容が中心です。秋期も、春期と同じ要領で進めていきます。順調に進んだ場合、秋期中に本テクストを読了します。その後の方針については、参加者と相談のうえ決定します。
○テクスト:九鬼周造『偶然性の問題』岩波文庫ほか
○開催日(春期):6.26、7/10,7/24(いずれも14:00~16:00)/(秋期)9.18、10.2、10.16、10.30、11.13、11.27、12.11、12.25、[2023]1.15、1.29(全10回)
○会場:木岡オフィス
○参加費:無料
本会については、随時参加申し込みを受け付けます。
◎木岡哲学塾Ⅲ:「個別面談」
日(16時以降)・水金午後(原則として、14時~17時)、個別の面談・指導を行っています。継続的な個人指導(隔週もしくは月1回程度)のほか、希望される方との面談の機会も随時設けていますので、お気軽にご相談ください。ただし、事前に希望日時をお知らせくださるようお願いします。(n.kioka@s3.dion.ne.jp)。
2 関大哲学会への出演
このたび、長らく続けてきた関西大学哲学会の会長職を辞することになりました。節目となる今年度大会では、「総会」の「会長挨拶」に続いて、「「哲学」としての風土学」と題する研究発表(討論を含めて1時間)を行います。過去半世紀の研究歴をおさらいしますので、関心がおありの方は、参加をご検討くださるよう、お願いします。なお本学会は、会費無料、どなたでも自由にご参加いただけます。プログラムの詳細については、同会のホームページ(www2.kansai-u.ac.jp/tetsugaku/)をご覧ください。
○2022年度関西大学哲学会大会
日時:3021年7月16日(土)13:30-17:20
会場:尚文館502講義室
プログラム:
1 研究発表(14:00-15:00)
木岡伸夫「「哲学」としての風土学」
2 哲学対話(15:10-17:20)
「多文化共生にむけて」(学生発表と討議)
3 拙著の翻訳出版計画
『〈出会い〉の風土学 対話へのいざない』(幻冬舎、2018年)のフランス語訳(Mésologie de la renconre : Une invitation au dialogue, traduit et noté par Augustin Berque)が、2023年にÉditions Dehors社から刊行される見込みとなりました。それに先立って、本年7月には、同書「第一シリーズ 風土学入門」(SérieⅠ: Introduction à la mésologie)が、P.U.F.(Pressenewss Universitaires de France)『哲学研究』(Études philosophiques, nº142)に掲載されます。