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A.
大阪都市域最大の再開発計画として、「うめきた2期」が注目されています。計画地域全体で90000㎡、その半分の45000㎡が「都市広場」とか。たしかにおっしゃるとおり、「緑とイノベーションの融合」を謳うだけの大がかりな構想ではあるようです。とはいえ、華々しくうちだされているヴィジョンのどこを見ても、「徳・品格・思いやり」につうじる雰囲気は見あたりません。というのも、この種の都市再開発事業は、バブルの時代(1980年代後半)から30年を経て、なお健在な企業戦略の現れに過ぎない、そう思われるからです。かつて「地上げ屋」が暗躍して、都市共同体破壊のお先棒を担いだという事実。むろん近年の再開発には、一見して昔のように露骨な利益追求目的ではない、種々の仕掛け――緑地面積の最大化など――が施されている。それは今日、ハードとしての街づくりから外すことが許されない「目玉」として、それなりに人心をそそります。
ですが、そんな計画には、あなたが期待される人間性の「徳」など見つかるはずもありません。孔子孟子が説いた「礼」の精神からは、まさに対極に位置するのが、私の申し上げる〈欲望の論理〉にもとづく現在の都市開発だからです。「質問」の最初に引かれた例は、儒教の本家である中国が、「改革開放」のスローガンの下で自国の哲学を忘れ去り、西洋近代の経済成長至上主義に染まり切っている現実、それと同時に、中国の人々がようやくそのことに気づきはじめたという、日本人にとっても他人事ではない事実を物語っています。
ですから、「うめきた2期」に関して、私からの「提言」などはありません。最初から哲学者不在の世界で、技術屋たちが引いた図面に、注文を付ける余地などないのです。
(木岡伸夫)