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#519
木岡伸夫
ゲスト

 一神教で信仰の対象となる神は、絶対者。それについて、「神は~である」と言明したなら、有限な人間が理解できる存在に相対化されてしまうので、マズイ。となると、人間が神について言えるのは、「神は~ではない」という否定的な命題のみ。これが、いわゆる「否定神学」の立場です。俺の信じる神とお前の信じる神が、同じか同じでないか。それを判断するためには、具体的な神の像――たとえば、G₁とG₂――を突き合わせて、比較することができなくてはなりません。しかし、本当の神Gtをそもそも具体化できない以上、G₁とG₂を直接比較することに意味がないのです。
 一神教の世界では、だれもが「同じ神」を信じるはずなのに、自分の信じる神と他人の信じる神が同じかどうか、どちらの像が正しいかを、客観的に判定することができない。肝心の「神」が何であるかを、ポジティヴに言明できない、という原理上の制約があるためです。そこで、中世に考え出されたのが、「存在のアナロギア」。「アナロギア」はアナロジー、類比を意味します。俺の信じる神とお前の信じる神が、同じであるかどうかはわからない。けれども、信者である俺とお前が神を信じるあり方は、比較すると、たがいによく「似ている」。信仰のあり方が「似ている」以上、信仰の対象も「同じ」だとみなしていいだろう、そういうアバウトな論理です。この線で、信者同士の〈水平のあいだ〉、人と神との〈垂直のあいだ〉を開く、というのが西洋の「アナロギアの論理」。これと異なる東洋の多神教的世界では、「アナロギア」ではなく「縁」をつうじて、水平・垂直の〈あいだ〉が結びつく〈縁の論理〉が成り立つ、というのが拙著『邂逅の論理』の最終章の趣旨です。
 いろんな疑問をお持ちの方に、こんな簡略な説明では足りないことは承知していますが、とりあえずのコメントまで。

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