1 「木岡哲学塾」について
◎木岡哲学塾Ⅰ:「対話の会」
更新日(5.21)の時点で、春期全10回中5回を終了しています。後半5回についても、現在の方針に沿って進めてゆく方針です。事例検討のためのPCAGIP法(内容については、3月の「新着情報」を参照)による第5回までに提供された事例のテーマは、次のとおり。
第1回(3.13):「〈対話〉としての哲学」
第2回(3.27):「忘れられない出会い」
第3回(4.10):「描かれないものたちへの思い」
第4回(4.24):「「災害対応への想い」を「備えていた」につなげたい」
第5回(5.8):「当事者会「いきるをつくる」の紹介」
第5回の後、本会の基本方針を再確認すべく、「何が哲学なのか――〈対話〉をめぐって」と題した一文を作成して、参加者にお示ししました。このさい、本会に関心をおもちの方、秋期からの参加(6月のHP更新時に、ご案内を出します)をお考えの方に、参考までに、ご覧いただきたいと存じます。
何が哲学なのか――〈対話〉をめぐって
木岡 伸夫
哲学に興味を抱いて、「哲学とは何か」を訊ねる人に向って、私は次のように答えています。①自分のテーマを、②自分の頭で考え、③自分の言葉で表現する、それが哲学だということです。この答えは、半世紀を超える自身の学問経歴をつうじて、「自分で」考え出した回答です。同じ答えは――哲学についての教科書がどれだけあるか知りませんが――、たぶん見あたらないでしょう。①~③の中でも、とりわけ②に引っ掛かる人が、世の大半ではないか、と思われるからです。なぜかと言えば、「死とは何か」「どう生きたらよいか」といった「哲学的」な問題は、「自分の頭で」考えるには難しすぎるので、誰かエライ先生――「哲学者」と呼ばれる――に教えてもらった方がよい、ということになるからです。無理もありません。「自分の頭」によほどの自信がない場合、他人から答えを教えてもらうということが、要領のよい生き方ですから――宿題を他人に手伝ってもらって、片づけた覚えのある人も多いはずです(かく申す私も、その一人)。日本でよく売れる書物は、すべてハウツーもの。『マルクスが30分でわかる本』( ?)といった類が、それです。自分で考えることをしない人向けに、俺のこの本を読んだら世界が解るよ、といった顔つきをした書物が市場に出回り、何十万部もの売れ行きを記録する、という日本の現実……
私が主宰する「対話の会」は、上に挙げた①③を最も重視します。そのうえで、②について、自分一人で考えるのはなく、他者とのやりとりをつうじて考えながら、自分なりの答えを引き出す(「気づき」に至る)ということが、「対話」という手続きをとることの狙いです。誰にも相談することなく、自分一人で考え抜いた結果を公表する――「研究発表」と呼ばれるこの種の行為は、それができる意欲と能力を具えた「専門家」のとる道であり、一般人にとって不可能ではないものの、困難な選択です。哲学がふつうの人に開かれるためには、「対話」という〈共同討議〉こそが、ふさわしい。このことに思い当たったのは、比較的最近のことです。私は、そのこと以外に、真の哲学は〈対話〉である、という確証を抱き、目下、それをテーマとする論文に取りかかっています。その理由を一言でいえば、〈邂逅の論理〉は〈対話の哲学〉を不可欠とする、ということです。
これまでの「対話の会」における「事例提供」は、自身の抱える問題について報告し、質疑応答をつうじて、各自「気づき」を得るという仕方で、①②③を実践してきました。これまで扱われてきた問題は、すべて⒜自分自身が問題の「当事者」となるケース、でした。しかし、それとは異なり、第三者的な立場から、⒝知的関心の標的となる哲学的テーマを取り上げる場合、があってもよいと思います。参加者各位が、①「自分のテーマ」を選ぶという大原則に立つかぎり、事例の内容は⒜⒝いずれであってもよい、と私は考えます。春期の後半は、そういう事例提供が増える見込みです。
以上の方針をご理解くださる方に、ひきつづき前向きのご参加をお願いします。
◎木岡哲学塾Ⅱ:「読書会」
こちらも「対話の会」と同じく、予定した全9回の前半4回を終え、後半に入りました。各回2時間の前後半を、学問的内容の発表・討論とテクスト読解とに振り分ける方針は、これまでどおりです。
- テクスト:九鬼周造『偶然性の問題』岩波文庫ほか
- 開催日(春期):5/29、6/12、6.26、7/10,7/24(いずれも14:00~16:00)
- 会場:木岡オフィス
- 参加費:無料
本会については、随時参加申し込みを受け付けます。
◎木岡哲学塾Ⅲ:「個別面談」
日(16時以降)・水金午後(原則として、14時~17時)、個別の面談・指導を行っています。常時数名の個人指導(隔週もしくは月1回程度)を続けているほか、希望される方との面談の機会も随時設けていますので、お気軽にご相談ください(ただし、事前に希望日時をお知らせくださるようお願いします。n.kioka@s3.dion.ne.jp)。
2 翻訳出版のお知らせ
オギュスタン・ベルク氏訳の対話篇『〈出会い〉の風土学 対話へのいざない』(幻冬舎、2018年、写真)が、近々フランス国内で出版されることになりました。Éditions Dehors社から、全篇の単行本が刊行されるほか、同書の「第一シリーズ 風土学入門」が、P.U.F.(Presses Universitaires de France)発行の専門誌『哲学研究』Études philosophiquesの「環境」特集号に掲載されます。
詳細については、来月の「新着情報」でお知らせします。