1 新著に向けて
「新着情報」冒頭の本ページは、エッセイではなく身辺雑記。「エッセイ」と「身辺雑記」、何が違うのかを説明しなければなりません。日本語でいう「エッセイ」は、随筆・随想の類、肩のこらない軽い読み物を連想するのがふつうです。しかしこの語は、フランス語の「エッセイエ」(試みる)からつくられ、英語の「トライ」と同じ意味を表します――ラグビーの「トライ」は、フランスでは「エセー」と呼ばれます。文章に当てはめると、「エッセイ」は「試みの論」「試論」ということになり、がんらい「論文」と見るべき書物に、謙遜の意を込めて、このタイトルが使用されることもよくあります。
サイトを開設して5年以上も経つ今ごろ、こんなお断りをするには訳があります。本サイトの「エッセイ」は、こちらでは、上に記したような「試論」のつもりでした。しかし、それでは読み物として硬すぎるのではないだろうか……。という次第で、だいぶ後になって、とっつきやすい雑文を最初に置く方針を立てました。読み手の印象からすると、たぶんこちらの身辺雑記の方が、エッセイらしいと思われるのではないでしょうか。
言い訳がましい口上を頭に並べたのは、今月の見出しをソフトな意思表示として受けとめていただきたいからです。『瞬間と刹那』(春秋社、2022年)を上梓してから、丸三年。そのころから考えてきたことどもを、そろそろ一書に仕立てる時機が来たと思われます――思いつきだけで、実現しないかもしれませんが。この機会に〈構想〉の一端を明かして、読者各位のご意見を賜りたいというのが、見出しに込めた思惑です。
新著のタイトルとして、『〈中〉のロゴス』を想定しています。「論理」ではなく、「ロゴス」を表題に掲げる理由は、広く「ことば」の働きを表す「ロゴス」の方が、「論理」よりも広い内容を含むと考えるからです。「中の論理」と言えば、山内得立が「ロゴス」に対置した「レンマ」が連想されます。この考えは、ロゴス=西洋の論理、レンマ=東洋の論理という形で、論理の世界を二分する発想に立っています。そこから私は、多大の示唆を受けました。しかし、ロゴス対レンマ、西洋対東洋、という二項対立を認めたのでは、双方の〈あいだ〉を開くことができなくなります。〈中〉は単なる論理ではなく、「中庸」「中道」がそうであるように、〈意味〉として現実に生きられる。生きられる〈中〉の意味は、哲学の世界で「論理」(ロジック)と呼ばれるものによっては、言い表されない。けれども、「論理」よりも広い意味での「ことわり」(ことばのはたらき)が「ロゴス」だとするなら、〈中〉の「論理」ではなく「ロゴス」というテーマ設定に、説得力が生まれるのではないかと考えられるのです。
まだ思いつきの段階ですが、大きく三つの部に分けようと考えます。Ⅰは、〈中〉についての哲学的アプローチ。二値論理が主軸であるロジックの世界では、〈中〉の意味が陰に隠れてしまう事実を指摘します。Ⅱでは、西洋的な論理に対して、東洋とりわけ中国において、実践に向けた〈中〉のロゴスが重視される事実を挙げ、東西の相違を際立たせます。最後のⅢは、かなり難しいけれども、Ⅰ・Ⅱで対立を際立たせた東西の〈あいだ〉を開く私なりの試みを提起するつもりです。論理としてではなく、生きられる〈中〉の意味は、〈あいだ〉を開く実践によって表現される。このことを風土学の理論装置によって言い表すなら、それは〈かたちの論理〉を具体化するということです。
なに、〈かたちの論理〉だって!それなら、「論理」を主張しているじゃないか!そう反論されるのも、ごもっとも。しかし、この場合の「論理」は、狭い意味のロジックとは違って、「ロゴス」のことですよ。と、とりあえずそういう言い訳をして、批判の矢をかわすことを、お許しくださるようお願いします。
何を言っているのか判らない、と言われることを承知で、新著の構想らしきものを披露しました。ご意見、ご批判をお待ちしています。
2 木岡哲学塾の活動状況
「木岡哲学対話の会」「哲学ゼミ」「個人指導」について、それぞれの近況をお伝えします。
Ⅰ 木岡哲学対話の会
3月から新年度の活動を開始しています。今年度は、過去に取り上げてきた多くのテーマを、新たに「環境問題」という視点から捉え直すことが狙いです。
◎第1回《環境問題を考える》
日時:3月2日(日)13:00-16:00
会場:大阪駅前第三ビル17F第8会議室
内容:
- 哲学講話:《「環境問題」とは何か》
風土学の立場から、「最も広い意味での環境問題」について、それを考えるに至った経緯
と問題の広がりを説明しました。
- 哲学対話:《私の環境問題》
参加者各自にとっての「環境問題」を数分ずつ語ってもらい、全員で意見交換しました。なかには、生成AIについての最近の啓発活動の成果を報告した人もいます。
3)その他
哲学対話での意見表明を受けて、次回以降の発表予定が具体化されました。
Ⅱ 哲学ゼミ
「対話の会」のない2月も、ゼミは次のとおり開催されました。
日時:2月16日(日)13:00-16:00
会場:木岡自宅
プログラム
1)《『国家』を読む前に》
テクストの読解にあたって、プラトン哲学と『国家』に関する基本事項を確認しました。
2)『国家』第一巻
「正義とは何か」をめぐる最初の対話について、参加者による報告を受けて、内容検討が行われました。
次回は、3月23日(日)に行う予定です。
Ⅲ 個人指導
各自の希望するテーマに沿って、レクチュア・読書指導・語学指導・論文指導などを自宅で行っています。2~4週に1回のペース。自己研鑽のためのレッスンが中心ですが、「木岡哲学対話の会」で発表するための助言を行うこともあります。読書指導では、プラトン『国家』、ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』、ホワイトヘッド『過程と実在』といった大作を中心に、さまざまなテクストを読んでいます。テクストの読解にとどまらず、その思想を現在にどう活かすかが、レッスンの眼目です。