風土学の理論三部作を10年にわたって書き上げたほか、2冊の単著を出版しています。それぞれの内容は、次のとおりです。
〇『風土の論理――地理哲学への道』ミネルヴァ書房、2011年
「風景とは何か」を追究した前著に続いて、風景が成立する世界(空間)を「風土」ととらえ、「風土とは何か」を主題として論じた著作。『風景の論理』が哲学における認識論とすれば、「風土の論理」は存在論に相当します。本書の中では、「物語空間」「社会空間」「普遍空間」という三つの空間を区別しています。三つの空間を考えるという点は、風景経験における三段階の区別と同じやり方ですが、それぞれの三段階がそのまま対応する、ということではありません(たとえば、「物語空間」に対応するのは、「基本風景」ではなく「原風景」です)。「国家(最大の社会空間)がいかにして成立するのか」という難問に答えようとする思考実験を試みたこともあって、一般読者には難しすぎる印象を与えたかもしれません。残念ながら、本書についての書評は目にしたことがありません。