1 哲学講話と哲学対話
「木岡哲学対話の会」は、「哲学講話」と「哲学対話」を二本の柱として、3時間の時間枠を折半する二部構成の形式をとっています。活動拠点を大阪駅前第三ビルの貸会議室に移してから二年半、この方針を堅持してきました。民間施設を借り受けて同名の催しを始めたのは、関大在職最後の2019年度から。次の2020年度にかけて、会場は変わったものの、内容は大学院講義「都市の風土学」(人間環境学研究)を引き継ぎ、ゲスト講師の講義にディスカッションを交え、2時間の枠に収めるというものでした。つづく2021-2022の二年間は、阪急京都線相川駅そばにあるアパートの一室を「オフィス」として、月2回(各2時間)程度、会を開きました。最初期から現在までの6年間、その中間期の2年間は、本会の運営方針を模索する過渡期に位置づけられます。現在まで都合6年半続けてきた「対話の会」。それを三期に分けるというのも大げさですが、各時期で会の性格がどう変化してきたのかを振り返ってみることにします。
最初の2年間は、関大の大学院講義「都市の風土学」の延長版。リレー講義風に、毎回違った講師に登場してもらい、一般向きのテーマでレクチュアをお願いしました。主宰者の私は、ナヴィゲーター役に徹して討論を仕切る――自身の講義の出番は、年1回。これは、大学院の授業とほとんど変わらないやり方です。変わった点は、講師の顔ぶれ。かつての同僚や知人の研究者以外に、一般参加者にも呼びかけて、自身のテーマで発表してもらう機会をつくりました。この傾向は、相川のオフィス時代に逆転現象を生じて、学者をゲストに呼ぶのではなく、一般参加者が自身の体験に即して意見を発表する場となりました。
となると、問題は会を主宰する私の役割です。「木岡哲学塾」の活動には、大きく二つの目的があります。一つは、自身の学問である風土学の理論を整備して、完成させること。もう一つは、そのことと並行して、人びとに哲学――自分のテーマを自分で考えること――のあるべき姿を示すこと。この二つは、別々のように見えますが、私の中では一体です。というのも、人と人が出会って対話するという風土学の理念が生きるためには、自分が研鑽するだけではなく、誰もがともに考えることのできる〈対話の場〉を開かなければならないからです。
第二期の相川時代、臨床心理学でPCAGIP(ピカジップ)と呼ばれる事例報告を中心に据えるとともに、私自身の学問を参加者に語り、議論し合う時間を設けました。これも二部構成ですが、当方の講義と参加者による報告(発表)には、内容にズレがあって連動していませんでした。講義によって、風土学ないし地理哲学というものが何であるかを伝える時間と、参加者が自分のテーマについて発表し討論する時間とが、どうつながるのかハッキリしませんでした。
第三期の現在、冒頭に記したように、私の担当する前半の「哲学講話」は、参加者各自の発表する「哲学対話」と内容的に連動することを意図して組み立てられています。それができるようになったのは、一人一人が自分の抱えるテーマについて考え、考えたことを他の人々と共有する――つまり〈対話〉する――手続きが、まさしく風土学そのものであることを、私が体得したからです。今年の全体テーマである「環境問題」に対する取り組みは、各自が〈自己〉というミクロのスケールから出発して、メゾスケールの〈地域〉、さらにマクロスケールの〈地球〉へと、スケールアップするアプローチを要請しています。このように三つのスケールを結ぶことのできる問題を、参加者が「哲学対話」で共有するのに先んじて、参考になる情報を「哲学講話」で提供する、という狙いの二部形式が、ようやく定着してきたことを実感しています。
2 「京都市景観政策検討委員会」の発足
先月の本ページでお知らせしたとおり、標記の委員会が7月22日に第1回の開催を迎え、2年間の活動を開始しました。委員は総勢15名。建築・土木・都市計画など、景観問題への技術的アプローチを手がける専門家が大半を占める中で、「風景」の視点を重視する人文系唯一の委員として、適宜発言を心がけたい旨を自己紹介しました。
次回は、9月24日(水)18時より行われます。
3 木岡哲学塾の活動状況
例年どおり、8月中は木曽の別荘に滞在するならいのため、三種の活動はいずれも休止しています。9月には以下のとおり、それぞれ活動を再開する予定です。
Ⅰ 木岡哲学対話の会
9月7日(日)に、本年度の第6回を開催します。
Ⅱ 哲学ゼミ
7月は、以下のとおり行われました。
〇日時:7月13日(日)13:00-16:00
〇プログラム
1)『国家』第六巻の読解
国家の守護者は哲学者たるべきとする第五巻に続いて、哲学者に要求される能力を論じる第六巻。「線分の比喩」などの重要箇所について、参加者からの報告を受けて、詳細な内容検討が行われました。
- 討議――国家について
国家と個人の関係について、参加者からの問題提起を受けて、幅広い意見交換が行われました。
次回は、9月21日(日)に行われる予定です。
Ⅲ 個人指導
立場や関心の異なるレギュラー数名と、それぞれの事情に合わせて2~4週に一回程度、レッスンを続けています。数か月から年に1回程度、特別な意見発表の機会に合わせて、相談に訪れる方も何人かいます。秋期は、9月3日(水)にレッスンを再開します。