1 60年目の〈邂逅〉
今月から、「新着情報」のページに、「身辺雑記」のような一文を入れることにします。本サイトの「エッセイ」は、ご承知のとおり、哲学に関する相当カタイ内容ですので、一般の方がイメージされる「随筆」は、こちらの方だとお考えください。ごく最近、中高時代の仲間との同窓会に出席したことから、気づいたことを少しだけ書かせていただきます。
奈良公園の真ん中、東大寺南大門のすぐ脇にあった母校東大寺学園は、中高一貫の進学校――現在、その名が全国に轟いていますが、創立まもない頃は、さほどでもありませんでした。6年間(一部の級友は、高校からの3年間)、ともに学んだ同窓生は、98人の少数。ちょうど3年前、高校卒業後50周年を記念しての同窓会が通知され、めったにその種の集まりに出ない私も、今回だけはということで、「出席」を返事しました。予定日は、2020年3月と言えば、そう、パンデミックの襲来が表面化した、ちょうどそのタイミングです。ために同窓会はお流れとなり、感染が下火となった先月(5.27)、三年遅れの開催にこぎつけたという次第です。
気の短い私は、開催延期が決定される際のやりとりの中で、終息の予測もつかない感染禍に振り回されて、先延ばしにするぐらいなら、取りやめにしてはどうか、と乱暴な意見を吐きました。しかし、辛抱強い幹事諸氏の骨折りのおかげで、このたび38名が参加して、それぞれに満足したのですから、メデタシメデタシ。
中学入学から、数えて60年目。在学中、顔を見かけることはしばしばでも、特に言葉を交わすような間柄ではなかった人たちが、相当数います。このたび幹事役を務めたY氏も、そうした一人。幹事三氏に、会でお世話になったお礼として、拙著『瞬間と刹那』を後日郵送したところ、Y氏から答礼の品とともに、メッセージが届きました。当方の「純粋な熱量をもって、相手を正面に置いて語りかける口調」を想起しながら、本を読み進めている、との文面に驚きました。たがいに語り合ったこともなく、それゆえ特に記憶されてもいないだろうと思っていたこちらの姿が、氏の眼には印象づけられていたのです。
手紙の最後には、「寺の庭には梅雨の晴れ間をついて大きな揚羽蝶が蜜を求めてきています」の断り――「寺」とあるのは、Y氏がボランティアをしている奈良の古刹です――とあわせて、次の一句が添えられていました。
黒揚羽 荘子の夢と 飛びにけり
『荘子』の中にある「胡蝶の夢」――夢の中で、自身が荘周であることを忘れ、蝶になって飛んでいたという故事――を下敷きにした表現です。おそらく中学生の頃から、詩人の感性がY氏の中に育まれていたであろう事実を物語っています。まったく予期しなかった氏との〈邂逅〉――60年目にして、はじめての――が、そのとき実現しました。
ひと月前の心に残る出来事を書き留めました。
2 木岡哲学塾の活動状況
Ⅰ 木岡哲学対話の会
◎日時:3.5、4.2、5.7、6.4、7.2[前期]/9.3、10.1、11.12、12.3、1.7[後期](各月第一日曜[11月のみ第二日曜]、年10回)、13:00-16:00
◎会場:大阪駅前第3ビル17階第7会議室(人数により、変更の場合あり)
◎参加費:1000円(各回)
◎第四回(6.4)の報告
第一部「哲学講話」:〈出会い〉のドラマ
1 ドラマとしての〈出会い〉
2 〈出会い〉と〈別れ〉
トピックは、上記の二点。〈あいだ〉〈縁〉につづいて、それらの根柢にある〈出会い〉の事実を考えました。〈出会い〉がドラマであること、〈出会い-別れ〉の展開が必然であることを語り、そうしたドラマの表現例として、『時代』(中島みゆき)を聴きました。
第二部「哲学対話」:情報社会をどう生きるか
発表(事例提供):「メディア・リテラシーについて」
メディア情報のもつバイアスを知るための心得(Ex.複数紙の比較講読)、「表現の自由」と人権の両立、といったテーマについて、発表者から明確な意見が提示されました。参加者の関心も高く、拡がり行くネット社会に対する懸念なども含めて、密度の濃い対話のひとときとなりました。
Ⅱ 哲学ゼミ
◎日時:3.19、4.16、5.21、6.18、7.16/9.17、10.15、11.19、12.17、1.21(各月第三日曜、年10回)、13:00-16:00。
◎会場:木岡自宅(JR大阪環状線・地下鉄長堀鶴見緑地線 大正駅(大正橋停留所)より、市バスで5つ目の「千島」[所要約8分]下車、徒歩3分)
◎プログラム
1)木岡伸夫『邂逅の論理』(春秋社、2017年)全9章の読解。
2)発表・討論。
3)何でも相談
◎参加費:2000円(各回)
Ⅲ 個人指導
◎会場:木岡自宅
◎開催日:水曜・金曜・日曜(Ⅰ・Ⅱの開催日を除く)の午後(原則として、13-17時のあいだの2時間程度)。事前の予約をお願いします。
◎内容:参加者ごとのさまざまなテーマ(Ex.ベルクソンの哲学、「意味」の問題、パレスチナ問題、「個」と「多」との関係、etc.)に応じて、それぞれ月1,2回のレッスンを行っています。
◎指導料:3000円
以上Ⅰ~Ⅲについて、参加の申し込みは、主宰者(木岡)まで(n.kioka@s3.dion.ne.jp)。
3 出張レッスンについて
新型コロナ・ウィルスの感染禍が収束しつつある昨今、以前ご案内したとおり(「出張ゼミについて」2022.9.21)、出張指導のご要望にお応えします。その折と同じ要領で、講演・講義・対話(ファシリテータ役を含む)・インタヴューなど、専門的な知見や技術を要する催しについて、出演の要請に応じます。個人指導(面談)のご相談にも応じる用意があります。このたびは、交通費・宿泊費などの必要経費、相談内容に応じた報酬のお支払いをお願いします。気軽にご相談いただければ、幸いです(n.kioka@s3.dion.ne.jp)。
4 HPへの投稿について
本サイトの「エッセイ」および「出会いの広場」のページには、投稿のコーナーが用意されています。トップページの「記事へのコメント」、「最近のトピック」をクリックしていただくと、それぞれの最新の書き込みにアクセスできることを、ご承知のことと存じます。
しばらく前まで、「最近のトピック」欄に迷惑投稿がしばしば出現することがあり、サイト管理者にセキュリティの強化をお願いした結果、正体不明の書き込みは跡を絶ちました。ところが、4月以降、「エッセイ」の内容に関する正規の投稿であるにもかかわらず、「スパム判定」を受けて削除されたという意外な情報が、読者の方からもたらされました。この事実を知った管理者に、機敏な対応をいただいたおかげで、その投稿を復活させることができましたが、同様の事態が他にも生じているのではないかと危ぶまれます。投稿しようと試みたが、掲載を阻まれた(記事を削除された)というような事実が、もしありましたら、当方まで早急にお知らせくださるよう、お願い申し上げます(n.kioka@s3.dion.ne.jp)。
上の一文を掲載した後、投稿の削除という不測の事態は解消されたことが判明しました。とはいえ、引き続きご注意くださいますよう、お願い申し上げます。