1 近くて遠い沖縄
梅雨さなかの晴れ間、カッと照りつける日差しとともに、一年前に訪れた沖縄の空が想い返されます。初めて沖縄の地を踏んだのは、昨年の八月下旬、姪の結婚式に参加するためでした。私にとって、近くて遠い沖縄――逆に「遠くて近い沖縄」と言ったのでは、ニュアンスが変わってしまいます。という次第は、2000年以降、「沖縄タウン」と呼ばれる大阪市大正区に住み続けてきた経緯があるからです。住まいの近所には、沖縄出身を告げる苗字が数多く見かけられます。JR大正駅前には、よく知られた沖縄料理店や居酒屋が並び、小さな食事処から物産店まで入れると、沖縄関連の店は区内で何十にも上るでしょう。それぐらい、この地域は沖縄の色が濃いところ。しかし、そうした身近さとは裏腹に、沖縄は遠い。近いにもかかわらず遠い、近さと遠さが同居する不思議な感じがつきまとうのです。
この場合、「オキナワ」と表記した方が、その不思議さの実体に近づくような気がします。カタカナで書くことによって、異界めいた雰囲気が漂ってくるから、などと言うと、気分を害する人がいるかもしれません。オキナワ・タウンは、誇張して言うなら、「日本の中の外国」。沖縄出身の人からすると、「異国にある自分たちの国」としてイメージされるでしょう。もっと複雑な例で言うと、大正区生まれで沖縄にルーツをもつ「二世」「三世」――このたび姪の連れ合いになったのも、そういう一人――にとって、ヤマトとウチナーとは、このような二重映し的イメージになるかと思われます。たとえば、泡盛などを商いながら、沖縄の意味を「内地」に問い続けてきた近所の「二世」Kさんは、自分はウチナンチューでもヤマトンチューでもないと言い切り、双方の〈あいだ〉に立とうとしています。
先日行われた母校の同窓会。欠席した同窓生Y君は、教育学部卒業後、志願して沖縄の小学校に赴任し、そのまま現地の人となって南風原に住みつきました。何カ月か前、吉野に残る家産を処分するため、こちらに帰ってきたという電話を受け、現地に住み果てるその覚悟のほどを伺いました――その用向きで忙しい彼とは、結局会えませんでしたが。
大正の地に生まれ育った、姪の連れ合い。内地から沖縄に移り住んだY君。大正に生まれて、沖縄の反基地闘争にたずさわるKさん。それぞれにとって、〈近さ〉と〈遠さ〉の意味合いは異なります。新たに得られた〈縁〉の意味を、自分もじっくりかみしめたいと思います。
2 木岡哲学塾の活動状況
Ⅰ 木岡哲学対話の会
◎日時:3.5、4.2、5.7、6.4、7.2[前期]/9.3、10.1、11.12、12.3、1.7[後期](各月第一日曜[11月のみ第二日曜]、年10回)、13:00-16:00
◎会場:大阪駅前第3ビル17階第7会議室(人数により、変更の場合あり)
◎参加費:1000円
◎第五回(7.2)の報告
第一部「哲学講話」:〈かたち〉が意味するもの
1 〈かたち〉(すがた)とは何か
2 〈もの〉との〈あいだ〉
〈もの〉(物、者)は、すべて〈かたち〉として現れる。〈かたち〉〈すがた〉〈かた〉は、いずれも目に見えるものの背後に、〈見えないもの〉(意味)が潜むことを表す言葉。これまで取り上げてきた〈あいだ〉〈縁〉〈出会い〉に続いて、今回は、〈もの〉との〈あいだ〉をいかに開くか、をテーマに議論を展開しました。
第二部「哲学対話」:〈多様化〉はなぜ、何のためか
今回は、発表(事例提供)の希望はなく、主宰者の用意した二種の資料――①「多様性とチーム・ジャパンについて」(ラグビーのチーム・ジャパンに関するレポート)、②「入試で優遇措置」に対する米連邦最高裁による違憲判決(新聞記事)――を配布して、「多様性」(多様化)というトレンドが孕む問題点を論じ合いました。
Ⅱ 哲学ゼミ
◎日時:3.19、4.16、5.21、6.18、7.16[前期] [前期]/9.17、10.15、11.19、12.17、1.21[後期](各月第三日曜、年10回)、13:00-16:00。
◎会場:木岡自宅(JR大阪環状線・地下鉄長堀鶴見緑地線 大正駅(大正橋停留所)より、市バスで5つ目の「千島」[所要約8分]下車、徒歩3分)
◎プログラム
1)木岡伸夫『邂逅の論理』(春秋社、2017年)全9章の読解(各回1章)。
2)発表・討論。
3)何でも相談
◎参加費:2000円
Ⅲ 個人指導
◎会場:木岡自宅
◎開催日:水曜・金曜・日曜(Ⅰ・Ⅱの開催日を除く)の午後(原則として、13-17時のあいだの2時間程度)。事前の予約をお願いします。
◎内容:現在、ベルクソンの哲学、「意味」の問題、パレスチナ問題、「個」と「多」との関係、など参加者ごとのさまざまなテーマに応じて、それぞれ月1,2回のレッスンを行っています。
◎指導料:3000円
以上Ⅰ~Ⅲについて、参加の申し込みは、主宰者(木岡)まで(n.kioka@s3.dion.ne.jp)。なお各種行事は、8月中はお休みとし、9月から再開します。
3 出張レッスンについて
新型コロナ・ウィルスの感染禍が収束しつつある昨今、以前ご案内したとおり(「出張ゼミについて」2022.9.21)、出張指導のご要望にお応えします。その折と同じ要領で、講演・講義・対話(ファシリテータ役を含む)・インタヴューなど、専門的な知見や技術を要する催しについて、出演の要請に応じます。個人指導(面談)のご相談にも応じる用意があります。このたびは、交通費・宿泊費などの必要経費、相談内容に応じた報酬のお支払いをお願いします。気軽にご相談いただければ、幸いです(n.kioka@s3.dion.ne.jp)。