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2023年10月21日新着情報

1 再会、そして〈邂逅〉へ

 タイトルを見て、ハテ何のことか、と思われるかもしれません。文字どおり、再会と邂逅とが立て続けに起こったことを表します。つい最近の出来事です。「近くて遠い沖縄」(7月)に記したとおり、私は2000年以来、大阪市大正区に住んでいます。その折、オキナワ・タウンであるこの町の特色、他所にない歴史や雰囲気を語りました。昨夏、姪の結婚式で初めて沖縄を訪れたことなど、ご記憶の方もおいででしょうか。

 その記事でも言及した沖縄在住の旧友Y君。彼が、同窓生仲間のMi君、Mo君と語らって、いまだ真夏日の九月末、三人でこの町に来てくれました。島尻郡南風原町に住むY君は、大正のオキナワ・タウンに関心があり、一度訪ねてみたいという希望を前から耳にしていました。そんなところに20年以上も定住している私のことにも、いくらか興味があるということかもしれません。彼と親しいMi君、Mo君も、同行するという話になり、思いがけないミニ同窓会が実現したわけです。高校を卒業してから、個別に顔を合わせることはあっても、こんな形でツアーが成立したのは初めて。まったく偶然の成り行きです。

 ここまでが「再会」。ここから話は、〈邂逅〉に移ります。大正の町と私を結ぶ〈縁〉の一つに、この地を拠点に反基地闘争をつづけている金城 馨氏の存在があります――7月の記事ではKさんと記しましたが、今回、本名に改めます。というのも、呼ばれればどこにでも出向いて、ご自分の思想を語っている金城さんを匿名扱いするのは、かえって失礼だと思うからです。その日、大正区役所で待ち合わせた4人は、私の発案で、金城さんが運営する近所の「関西沖縄文庫」を訪問しました。そこはビルの2階で、名が示すとおり、沖縄関連の図書がズラリと陳列され、貸し出しのほか、新刊書の販売も行うなど、図書館と書店を兼ねています。この場所を再三訪れている私の目的は、部屋の沖縄物産のコーナーにある泡盛を購入することでした。店の経営をしていた氏の兄上が、今春逝去されてから、物産は店じまいになりました。買い物ついでに金城さんとも顔を合わせ、立ち話をする間柄になっていた私にとって、初対面ではないものの、出来事としては〈邂逅〉と言いたいのです。

「関西沖縄文庫にて 中央が金城馨氏、その右隣が筆者」

 不意の来訪にもかかわらず、金城さん本人が出てこられ、これまで伺ったことのない真摯なお話――生い立ちから現在までの個人史、そこには沖縄と正面から向き合ってこなかった日本に対する憤りがこもっています――をされました。私にとっても、以前からここで開かれる三線のレッスンに通っているMi君にとっても、初めての体験でした。これこそ〈邂逅〉そのもの。ご本人が、「かなぐすく・きんじょう かおる」と名乗る理由は、沖縄人でも日本人でもなく、沖縄人でも日本人でもある、という〈あいだ〉の自覚によることが、書かれた文章からも判ります。ちなみに、7月にY君をご紹介した折、単純に「現地に住み果てる覚悟」とお伝えしたのも誤りで、彼もまた、逡巡しながら日本と沖縄の〈あいだ〉に立ち続けているという事情が、今回の再会から判明しました。この場で、お詫びかたがた、訂正させていただきます。〈あいだを開く〉という私自身のモットーを、人生において体現している人たちと再会し、また邂逅した一日でした。

2 論文の公刊

 このほど、最新論文「「中の論理」再考」(『文學論集』第七十三巻第一・二合併号、関西大学文学会、二〇二三年九月)が刊行されました。内容は、山内得立がレンマの論理として具体化した「中の論理」は、「二者の中間」というロゴス的発想にとらわれているのではないか、ロゴスにとらわれない「中庸」「中道」の観点から、もう一つの「中の論理」が考えられるのではないか、という疑問を形にしたものです。本論文の続篇として、儒教・道教の「道」概念、日本的な〈道の文化〉に照準を定めた「〈道のロゴス〉試論」の公刊を、年内に予定しています。

→「中の論理」再考

3 木岡哲学塾の活動状況

 木岡哲学対話の会

◎報告(第7回)

日時:10月1日(日)13001600

会場:大阪駅前第三ビル17F7会議室

内容:

 ⑴哲学対話:《民主主義のABC

 前回の発表(土屋隆生《「民主主義」再考――「権威主義」との比較において》)をめぐって、十分展開できなかった対話を、今回も継続して行いました。事前に行ったアンケートの回答を資料として、発表者から補足説明が行われ、全員での対話が広がりました。

 ⑵哲学講話:《国家の論理(上)――「戦争」について(2)》

 社会空間を代表する国家の存在を戦争の主体に見立て、国家と戦争の関係を問い直す2回のシリーズ。今回は、ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』から、「閉じた社会」と「開いた社会」の区別を引き、国家の存在に否定的な考え方を紹介しました。

→国家の論理(上)

次回は、ベルクソンとは対照的に、国家に積極的な役割を認める田辺元の「社会存在の論理」(種の論理)を取り上げ、その意義を検討します。シリーズのテーマは「戦争について」。次回以降の予定は、以下のとおりです(状況により、変更する場合があります)。

 第三回(11.12) 「国家の論理」(下)

 第四回(12.3) 「〈あいだ〉に立つ」

 第五回(1.7)  「総括討議」

 ⑶その他

 来年の予定を相談しました。2024年度は、今年度と同じ要領――同一会場、各月第一日曜開催、全10回――で行うことが決まりました。

◎次回(第8回)の案内

日時:1112日(日)13001600

会場:大阪駅前第三ビル17F7会議室

内容:

 ⑴哲学講話:《国家の論理(下)――「戦争」について(3)》

 田辺元「社会存在の論理」(『種の論理』岩波文庫)を参考文献として、国家と個人の関係を追究します。

 ⑵哲学対話:《パレスチナ問題のゆくえ》

 発表:丘 政彦《「沈黙を破る」ということ》

 哲学ゼミ

後期の第1回(9.24)、第2回(10.15)につづいて、第三回を次のとおり行います。

日時:1119日(日)13:001600

会場:木岡自宅

プログラム

 1)木岡伸夫『邂逅の論理』(春秋社、2017年)「第八章 アナロギアの論理」の読解。

 2)発表・討論。

 3)何でも相談

 個人指導

会場:木岡自宅

開催日:水・金・日(上記イベントの開催日を除く)の午後(原則として、1317時のあいだの2時間程度)。事前の予約をお願いします。

内容:参加者の要望に応じて、読書指導・語学指導・作文指導などを中心に、研究上の助言を行っています。月1,2回のレッスンが標準です。

以上の催しに参加を希望される方は、次のアドレスまでお申し込みください。

 n.kioka@s3.dion.ne.jp

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