毎月21日更新 新着情報

2024年5月21日新着情報

1 連休の終わりに

 今日56日(月)は、5日(日)「子どもの日」の代休日、今年の大型連休の最終日となりました。この期間、昔は旅行や釣り、近年は木曽の別荘で過ごすのがならいで、在宅することはほとんどありませんでした。今年は、ふだんどおり哲学塾のレッスンをし、来客の相手をする以外、外出することもほとんどありません。何となく手持ちぶさたの感じが付きまとうのは、先月書いた「春愁」がそうであったように、これまで当然のようにあった時間が、急に無くなった事情によるものかと思われます。

 大学に勤める身であれば、まとまった休みがとれるGWに、出かけない手はありません。趣味の渓流釣りや山菜採りという目的がある以上、山野に分け入る絶好の機会を逃がすなんてことは、考えられません。生涯唯一の贅沢として、別荘を誂えたのは、夏休み以外に、新緑の時期に利用できる遊び用の基地をもちたかったからです。ところが、あろうことか、その宿願を果たした――別荘が完成した――まさにその年、小脳出血に見舞われて、思い描いた釣り三昧の暮らしなどは、夢の話となりました。

 それでも、標高1200mの御岳山麓に訪れる遅い春、釣りにはまだ早くても、フキノトウから始まって、コゴミ、タラの芽など、出盛る山の幸を摘み取ることのできる仕合せをつくづく感じられるのが、この時期の山荘暮らしです。しかし、それも用心しなければ、大変なことになります。

8年前の2016年に、こんなことがありました。5月頃に芽を出すオオバギボウシ、通称「ウルイ」が、別荘に近い散歩道横の斜面に出ているのを見つけ、喜んで摘みとり、茹でて食卓に上せました。ウルイは、店でも売られていますが、シャリッとした食感と、あっさりした風味が売りの、クセのない山菜。それを食したあと、何気なく手許にあった山菜のガイドブックを開いてみたところ、「山菜に似た毒草」の一つとそっくりではありませんか。いま食したのは、クルッと内側に巻き込む若芽の格好が、ウルイそっくりのバイケイソウではないか!そうと判った瞬間、いきなり猛烈な吐き気に襲われて、トイレに駆け込んだものの、後の祭り。救急病院に運び込まれた時点では、血圧が30台――顔を上げることのできない貧血状態、というのは想像がつくでしょうか。一晩入院して、何とか収まったものの、危うく死ぬところでした――じっさい、近似種でより毒性の強いコバイケイソウに当たって死んだ人は、その年もいたことが報じられています。バイケイソウの白いきれいな花を、夏山でよく見かけますが、若芽が猛毒であることを知らず、手を出してエライ目に遭いました。忘れられないこの時期の思い出です。

5月の連休以後でも、庭先に出てきた熊が、桜の木の細いテッペンまで上り、小さな実を枝ごと貪り食うさまを目撃したことがあります――中毒事件の12年後だったでしょうか。私はこれまでのところ大丈夫ですが、熊の被害もよく起っています。別荘を建ててくれた大工さんは、松茸採りに入った山中で遭遇して、いきなり襲われ、気丈に立ち向かったものの、顔面を噛まれる大怪我――警察に知らせなかったため、ニュースにはなりませんでしたが。大阪から半日かかるこの土地には、都会でふだん体験することのない非日常の自然があります。そこに身を置き、世間との距離を測るために、明日から三日の滞在予定で出かけることにします。

2 出張講演のお知らせ

 日本サウンドスケープ協会主催の公開シンポジウム《心に残る音の風景》に招かれ、基調講演を担当することになりました。3月上旬に勝浦市の国際武道大学から招かれたのに続き、偶然ながら、今回の開催地も同じ千葉の幕張。無料で公開されますので、関心のある方は、ポスターで詳細をお確かめのうえ、ご参加ください。

シンポジウム《心に残る音風景》

〇日時:616日(日)13301710

〇会場:放送大学附属図書館AVホール(千葉市美浜区若葉211) 

〇プログラム:

  1. 「心に残る音風景」写真動画コンテスト「表彰式」
  2. 招待講演:木岡伸夫「沈黙と響きの〈あいだ〉――サウンドスケープに寄せて」

 →ポスター表

 →ポスター裏

3 木岡哲学塾の活動状況

 木岡哲学対話の会

◎第3回の報告

 日時:5月5日(日)13001600

 会場:大阪駅前第三ビル17F7会議室

 テーマ:《基本的人権を問い直す》

1)哲学講話: 《人権と正義》

 憲法の保障する基本的人権は、自由と平等の両立を要求する。現代の正義論を代表するロールズ、ドゥウォーキン、サンデルの説を紹介し、アファーマティヴ・アクション(積極的差別是正措置)の理念をめぐる争点を取り上げて議論しました。

 →人権と正義

2)哲学対話:《合理的配慮とは何か――ダイバーシティの実現のため》

 高次脳機能障害の当事者である発表者が、企業内の啓発活動(東京での「勉強会」)など、最近の取り組みの成果を報告し、多様性の実現に向けて、〈当事者-行政-企業〉の連携するシステムづくり――困りごとに関するデータベースの作成――を、自身の課題として示しました。

〇第4回の予定

 日時:62日(日)13001600

 会場:大阪駅前第三ビル17F7会議室

 テーマ:《自律の条件》(プログラムの詳細は未定)

 哲学ゼミ

2024年度の第3回を、次のとおり行いました。

〇日時:519日(日)13:001600

〇会場:木岡自宅

〇プログラム

1)テクスト読解:

木岡伸夫『瞬間と刹那――二つのミュトロギー』(春秋社、2022年)「第四章 瞬間と実存――九鬼周造の時間論」。

2)発表と討論:

発表テーマは、「異文化との出会い――エジプト旅行から」。

3)その他

 個人指導

〇会場:木岡自宅

〇日時:日・月・水・金の午前(10時―12時)または午後(13時―17時)を原則とします。事前予約制。

〇内容:学生・一般社会人を対象として、語学指導・読書指導・作文指導など、それぞれの希望に合わせて、個人指導を行います。2~4週間に1回、各2時間が原則。現在の指導内容(紹介は一部)を、以下に例示します。

 ・Aさん:プラトン『国家』ほかの読解をつうじて、社会における自律と共生のあり方を考えています。

 ・Bさん:〈意味〉を自身のテーマとする本人の希望に沿って、山内得立『意味の形而上学』の読解を進めています。

 ・Cさん:ベルクソンへの関心に合わせて、「意識と生命」のフランス語原典を講読するかたわら、『道徳と宗教の二源泉』および拙著『〈あいだ〉を開く』を読み進めています。

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