毎月21日更新 新着情報

2024年7月21日新着情報

1 音風景との出会い――幕張にて

 5月の「新着情報」でお知らせしたとおり、日本サウンドスケープ協会主催のシンポジウム《心に残る音風景》(616日、放送大学千葉学習センター)に招待され、「沈黙と響きのあいだ――サウンドスケープに寄せて」と題する講演を行いました。その報告をします。イベントは、第1部・第2部からなり、私の講演は第2部。プログラムと講演の内容については、会場配布の資料(後出リンク)をご覧くださるようお願いします。

 かつて一度も足を踏み入れたことのなかった千葉県に、三か月前に続いて、立てつづけに出張しました。三月に訪れた国際武道大学の勝浦市とは異なり、放送大学千葉学習センターは東京湾岸副都心の幕張地区にあり、どちらも海に面するという以外、環境は大違い。JR京葉線で、東京から快速で30分ぐらいの「海浜幕張」下車。目的駅に近づくほど乗客が増えていく珍現象は、千葉ロッテ・マリーンズの本拠地、ZOZOマリンスタジアムで、当日午後にセパ交流戦の最終試合が行われるためと分かりました。その混雑のため、駅から会場まで予定していたタクシーには乗れず、歩いたことから、第1部の開始に15分も遅れてしまいました。

 第1部は、「心に残る音風景」コンテストに応募した作品の紹介、入選作選定の経過説明と表彰、審査委員によるパネル・ディスカッションが予定されており、作品紹介の途中で入場するハメになったのは、私にとって不本意でした。作品は、写真・動画の部に分けて募集されたのですが、動画はともかく、写真には「音」がありません。一枚の映像が音風景を表現するとは、どういうことなのか。けげんな思いの私にとって、とりわけ写真の部優秀作「松戸 さくら通りの切り株」についての紹介が済んだ後に入場したことは、残念でした。切り株の中心がえぐれて空洞になった桜の木。そこから聞こえる音があるとしたら、いったいどんな響きなのか。こういう疑問を解く機会を失したからです。

 こちらのナイーヴな先入見が正されたのは、講演後の質疑と、イベント後の懇親会(情報交流会)でのやりとりをつうじて。音が含まれない画像であっても、そこに音環境の表現が成立していれば、サウンドスケープとして評価されるということが、協会の重鎮である平松幸三先生、鳥越けい子先生からのご説明で、腑に落ちました。招待講演のお話があった時点で、サウンドスケープ・デザインを音響工学的な環境設計として受けとめた当方に、思い違いがあったことが判りました。参加者の中に――すくなくとも発言した人の中に――、音響技術の専門家がいなかったことは意外でしたが、そういう協会の趣旨からすれば当然のことでしょう。

 音風景との出会いによって、〈風景〉そのものの意味を根本的に考え直す機会が得られた。このことが、今回のイベント参加最大の収穫です。五感のうち聴覚は、他の感覚と結びつきながら形成される共感覚の全体を支配する、最も肝要な地位を占めています。音を含まない風景はありえず、すべての風景は音風景なのです。このことが、処女作『風景の論理――沈黙から語りへ』(世界思想社、2007年)の時点では、解っていませんでした。風景と言えば、風景画のようにヴィジュアルな空間の知覚を連想する世のならいに、自分も無批判に従っていたためです。一般的な風景理解とは異なる「基本風景」や「原風景」のような概念をうちだしておきながら、このナイーヴさはどうしたことでしょうか。風景がそこから生まれる「原型」(X)と「原風景」とのつながりは、〈響き〉――旧著の副題にある〈語り〉よりも、広範な意味の表現――があればこそ。ここでは感想の一端にとどめますが、このシンポジウムから生まれた気づきと数々の出会いに、深く感謝せずにはいられません。

2 シンポジウムへの参加

 1で報告したとおり、日本サウンドスケープ協会主催のシンポジウム《心に残る音風景》(616日、放送大学千葉学習センター)に参加しました。当日の会場で配布された資料には、講演の発表原稿が掲載されていますので、ご一読をお願いします。

 →シンポジウム配布資料

3 木岡哲学塾の活動状況

 木岡哲学対話の会

◎第5回の報告

 日時:77日(日)13001600

 会場:大阪駅前第三ビル17F8会議室

 テーマ:《「私」の現在》

  1. 哲学講話: 《自己と他者》

自由の基底である人格。人格の主体が〈自己〉であるためには、〈他者〉との関係性が不可欠である。この事実を、幼児の対人関係(鏡像段階・一人称代名詞の使用)、成人同士の〈出会い〉、という対照的な二つの局面から明らかにしました。

  →自己と他者

2)哲学対話

発表:《VUCAの時代――現代社会を生きる私》

 変動性・不確実性・複雑性・曖昧性のVUCAで特徴づけられる現代社会を、「転職の時代?」「少子化の時代?」「ジェンダー・フリーの時代?」という三つの視点から分析し、発表者自身の生き方を参加者に問いかけました。

3)その他

 2名の参加者から、発表後の活動状況について報告がありました。

〇第6回の予定

 日時:91日(日)13001600

 会場:大阪駅前第三ビル17F7会議室

  9月からの後期のプログラムについては未定です。

 哲学ゼミ

2024年度の第5回を、次のとおり行います。

〇日時:721日(日)13:001600

〇会場:木岡自宅

〇プログラム

1)『瞬間と刹那』「第五章 大森時間論の射程」

 6月に休止したテクスト読解を再開します。ゼミ参加者から、当該箇所についての報告が行われ、内容をめぐる討議を進める予定です。

2)発表と討論:

対話〉をテーマとする前回の発表内容を、関心の焦点を際立たせるように再整備してもらい、発表者の問いを全員が共有できるよう試みます。

 個人指導

〇会場:木岡自宅

〇日時:日・月・水・金の午前(10時―12時)または午後(13時―17時)を原則とします。事前予約制。

〇内容:学生・一般社会人を対象として、語学指導・読書指導・作文指導など、参加者ごとの希望に合わせて、個人指導を行います。2~4週間に1回、各2時間が原則。現在の指導内容を、以下に例示します。

 ・Aさん:プラトンの対話篇から、社会的実践と道徳の関係に関心を深め、これから儒教の古典『大学・中庸』の読解に挑みます。

 ・Bさん:山内得立『意味の形而上学』の読解を終了して、ホワイトヘッド『観念の冒険』を読み進める予定です。

 ・Cさん:ベルクソンへの関心に合わせて、「意識と生命」のフランス語原典を講読するかたわら、『道徳と宗教の二源泉』を読み進めています。

 以上の行事は、8月中は休止とし、9月から再開します。

4 転居のお知らせ

715日をもって、下記の住所に転居しました。同じ集合住宅内での部屋移動です。「木岡哲学塾」の自宅での活動継続に、支障はありません。引き続きよろしくお願いします。

(新住所)551-0003 大阪市大正区千島3125217

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